自分は変わっていないつもりだった。女性管理職になって感じた戸惑いと孤独

文:いずみ

私が管理職になったのは、今から10年ほど前のことです。

当時、私の会社で課長以上の女性は、私を含めてたった3人しかいませんでした。同年代の男性管理職と比べても、1割に満たない人数でした。

世の中でも「女性管理職を増やそう」と、企業が本気で取り組み始めたころだったと思います。

でも、「企業努力をしなければ女性管理職が増えない」ということ自体、考えてみれば少し不思議な話です。男女平等という言葉が聞かれるようになってから、もう何年もたっていたはずです。それでも実際の会社の中では、まだ口先ほどには変わっていない。私はそう感じていました。

ここ数年は、女性の課長に出会うことも少しずつ増えてきました。それでも、部長以上の女性には、今もめったに出会いません。

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課長への推薦を、受けるか迷った

私も、課長に推薦すると言われたとき、受けるべきか辞退すべきか迷いました。

課長になれば、責任が重くなる。仕事が増える。人間関係も今までより複雑になる。

少し離れたところから管理職を見ていたころから、「中間管理職って大変だなあ」と思っていました。

役職手当がついて給料は少し上がります。でも、気楽な立場のままの方がいいのではないか。そんなことを漠然と考えていました。

それでも、周りを見渡すと、後輩の女性社員たちが一生懸命働いていました。その姿を見ているうちに、「この子たちのためにも、私がなった方がいいのかもしれない」と思うようになりました。

私と一緒に働いていた女性社員には、昇格に意欲的な人が多くいました。「早く、もっと上に行きたい」と、はっきり口にする人も何人もいました。

私の会社では、社員一人ひとりに「A-1」「B-2」といった記号で社内の等級が付けられ、その等級が基本給や昇格に関わっていました。一般には「等級制度」と呼ばれる仕組みに近いものです。後輩たちは、その等級を一つずつ上げようと頑張っていたのです。

私が先に進むことで、「女性でもここまで行ける」と思ってもらえるなら、やってみよう。そんな気持ちで、私は課長になることを選びました。

女性社員から「目標」として見てもらえた

課長になってよかったと思えたこともあります。

女性社員から、目標のように見てもらえていると感じることがありました。自分が誰かの目標になっている。それは、とてもうれしいことでした。

一方で、一部の男性社員からは、それとはまったく違う反応を感じることがありました。

上司として認められていないように感じたこと

特に難しかったのは、年上の男性部下に、仕事のやり方を変えた方がよいと提案したり、注意したりするときです。

また、客先へ同行すると伝えたとき、私を「自分の上司」として紹介することを嫌がっているように見える振る舞いをされたこともありました。

相手が本当は何を考えていたのかまでは分かりません。ただ、私にはそう感じられたのです。

相手の表情や言葉の端々から、私を上司として受け入れてもらえていないように感じると、「自分は上司とは認められていないんだ」と落ち込むこともありました。

お互いに、仕事と割り切って向き合わなければ。そう思っていても、自分の感情がついていかないことがありました。

女性が同じ評価を得るには、何倍も頑張らなければならないのか

私は長い会社員生活の中で、「女性が男性と同じ評価を得るには、何倍も頑張らなければならないのではないか」と感じることが何度もありました。

これは、すべての会社に当てはまると言いたいわけではありません。私がいた会社で、私が見て、経験した範囲での話です。

女性が売り上げを伸ばし、お客様からよい評価をいただいても、それだけでは十分に評価されないことがありました。その一方で、男性社員については、実績が昇格の大きな理由として語られる。私には、そのように見える場面がありました。

「私が男女を意識しすぎているのだろうか」

「でも、同じように働いて、本当に同じように見てもらえているのだろうか」

その間で、気持ちはいつも揺れていました。

そういう環境の中で役職をもらい、仕事を続けていくうちに、私は自分でも気づかないまま身構えていたのかもしれません。だから、管理職という立場を、心のどこかで受け入れ切れていなかったのかもしれません。

「それは命令ですか」と聞かれた日

一度、若い男性社員に、帰りにみんなで食事をしていかないかと誘ったことがありました。そのとき、返ってきたのは、こんな言葉でした。

「それは命令ですか」

驚きました。そして、寂しくなりました。

私は、みんなで食事をするつもりで声をかけただけでした。でも、その返事を聞いて、自分の言葉の受け取られ方が変わったのだと感じました。

そうか。私が発する言葉は、もう、ただの同僚からの言葉や誘いには聞こえなくなってしまったのか。

そのことが、本当に寂しかったのです。仕事帰りの食事にも、以前のように気軽に誘えなくなりました。

ため息も、愚痴も見せられなかった

管理職になりたてのころは、ため息ばかりでした。

でも、そのため息も人前では見せられない。愚痴も言えない。私は、そんなふうに感じていました。

「上に行けば行くほど、孤独になる」

どこかで、そんな言葉を聞いたことがありました。

でも、私はまだ、ちょっとしか上になっていないのに……。

中間管理職って、本当に大変だと思いました。

自分は同じでも、周りとの関係は変わっていた

管理職になっても、自分自身は変わっていないつもりでした。

けれど、周りからの見られ方や、自分の言葉の受け取られ方は、そうではありませんでした。

相手から「上司」として見られることで、以前のように気軽に接してもらえなくなる。一方で、仕事の場面では、上司として認められていないように感じて落ち込むこともある。私は、その両方を経験しました。

女性管理職であることを意識しすぎていたのかもしれない。もっと堂々としていればよかったのかもしれない。今でも、はっきりした答えは分かりません。

それでも、迷いながら課長になった私を見て、後輩の女性社員が「自分も上を目指したい」と思ってくれたのなら、引き受けた意味はあったと思っています。

うれしさも、戸惑いも、孤独もありました。それが、私が女性管理職として働いた時間でした。

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